倫理審査委員会

倫理審査委員会 平成27年02月18日(水)

審議内容

申請者 救命救急センター看護師 相馬 裕美子
課 題 静脈留置針の自己抜去予防にアームカバーは有効か
研究の概要 当院の救命救急センターの年間患者数は1912人であり、入院患者の年齢層は高齢化しており救命センター全体の58%が65歳以上の高齢者となっている。
救命センターに入院している患者は、治療のためにライン・ドレーン類が多数装着され、観察が容易に出来るよう開かれた環境となっている。また、緊急入院が昼夜問わずあり、情報交換のためのスタッフの声や同室者と看護師、同室者の独語。多数の医療機器のアラーム音やワゴンを押す音、排泄物の臭いなどがある。また、患者様の安静と感染予防のため面会制限があり、家族以外の人とは会えず、家族と会える時間も短時間である。さらに、治療がきちんと行うためや、安静のために行動に制限がかかることも多く、このような特殊な環境下で過ごすことや疾患に伴う脳機能の変調、意識障害がICUシンドロームの原因になっている。ICUシンドロームでは、危険を認識出来ず、身体損傷を起こすリスクがある。身体損傷予防、危険回避の対応として、やむを得ず身体抑制を行ったり、頻回な訪室、患者が刺入部を見えないように包帯で保護したり、首元から点滴ラインを出すなどの方法を行っている。このような対応をしていても静脈留置針の自己抜去のインシデントが昨年度30件あった。自己抜去の原因として、点滴刺入部に目がいき触ったり固定テープをはがしたり、ラインを引っ張ったりしてしまう。包帯保護をしていても、気になってしまい包帯を外し自己抜去に至る。これらの対応では防ぎきれない場合、安全具の使用が選択されている現状がある。しかし、安全具を使用することで患者の心理に苛立ちや不快感や執着心などの悪影響を及ぼしている可能性が推測される。自己抜去したことで、治療を続けることが困難になり、治療の遅延に繋がる。さらに、再度の穿刺で患者にとっても苦痛が生じる。安全安楽に点滴治療を受けることが出来るよう管理する必要がある。
吉岡らは、「自己抜去を防ぐには自然な形で刺入部位へ気がいかず目障りなく不快感を与えない工夫が必要である。」と述べている。そこで点滴留置を意識させないための刺入部位の保護をして目障りではなく、不快感を与えない素材はないかと検討し日常的に使用されている「アームカバー」が保護素材として適しているのではないかと考えた。アームカバーは、寝衣の一部として患者が認識し刺入部への意識が薄れ、直接刺入部を触るのに時間がかかるため、自己抜去予防につながると考えた。また、着脱が容易であり、刺入部の観察がしやすいと推測される。
そこで、アームカバーの着用が自己抜去に有効であるのか検討する。
判 定 承認
本審査は、全員一致で承認された。
申請者 6階東病棟看護師 佐藤 ほのか
課 題 放射線治療を受けている患者の粘膜障害による疼痛に対するコーヒーホワイトナーを用いたアイスボールの効果
~コーヒーホワイトナーを用いたアイスボール作成から服用方法の検証~
研究の概要 頭頚部癌で放射線治療を受ける患者に対し、先行研究で、口腔内アイシングは嚥下時痛の出現時期と口腔粘膜炎の出現を遅らせ、咽頭粘膜炎の程度が軽くなることと、ミルクケア(食前にコーヒー用ミルクを口腔内にふくませる)では口腔粘膜炎の痛みの軽減が図れることが証明されている。私たちは、この二つを合わせて「コーヒーホワイトナーを用いたアイスボール」(コーヒー用ミルクを凍らせて食前に舐める)を、患者さんに導入したいと考えている。その前段階として、コーヒーホワイトナーを用いたアイスボールの安全性の検証の為、病棟看護師30名を対象にコーヒーホワイトナーを用いたアイスボールの口腔粘膜への影響と投与方法、安全性の検証をする。コーヒーホワイトナーは看護研究メンバーが購入した、4種類のものを使用する。4種類ある中から、患者に使用するものを総合的に判断する。
判 定 承認
本審査は、全員一致で承認された。
申請者 6階西病棟看護師 吉田 明日実
課 題 患者参画型看護を実施するためのウォーキングカンファレンスの実施と評価
研究の概要 ベッドサイドで患者さんと共にカンファレンスを実施することで、患者さんの意見が反映された看護の充実が図れるかを患者さんへのインタビューの結果から考える事で明らかにする。
判 定 承認
本審査は、全員一致で承認された。
申請者 統括診療部長 小泉 雅典
課 題 膵・消化管および肺・気管支・胸腺神経内分泌腫瘍の患者悉皆登録研究
研究の概要 神経内分泌腫瘍(NET:Neuroendocrine Tumor)はホルモン産生能を有する神経内分泌細胞由来の腫瘍の総称である。神経内分泌細胞は内分泌臓器のみならず全身に存在するということが確認されており、NETもDiffuse Neuroendocrine System(DNES)としてあらゆる臓器に発生することがあきらかとなっている。
一般的にNETは患者数も少なくまれな疾患とされているが、米国のthe Surveillance,Epidemiorlogy,and End Result(SEER)によると患者数は経年的に増加傾向にあり1973年の年間発症率が1.09/100,000人であったのに対し、2004年のデータでは5.25/100,000人と5倍に増加した。
膵・消化管および肺・気管支・胸腺を原発部位とした神経内分泌腫瘍患者を悉皆登録して患者の分布を明らかにするとともに、今後のNETに関する臨床研究・臨床試験に必要な情報を抽出するための基本台帳を作成することは大変重要なことにて本研究を行う目的である。
判 定 承認
本審査は、全員一致で承認された。