外科

食道がんと食道がんの治療

食道とは

 のど(咽頭)と胃をつなぐ長さは約25cm、太さは2cmほどの管状の臓器です。食べたものを胃まで送り込むはたらきを担っており、伸縮性に富んだ臓器です。食道は胸の中心を縦に走っており、前方では気管・気管支・心臓と、後方では脊椎(背骨)と、両脇は左右の肺と接しています。また、左側は大動脈とも接しており、生命維持に重要な臓器と隣接しているといえます(図1)。前後から見ても、左右から見ても胸のほぼ真ん中にあります。

図1:食道と周囲臓器の関係

食道がん

 食道がんは、食道の内側をおおっている粘膜から発生します。発病の原因は不明ですが、喫煙や飲酒と関係が深いと考えられています。2019年のがん統計によると、人口10万人あたりの発生率は、男性35.4人、女性7.2人であり、男性に多いがんといえます。

 がんは、初期のうちは粘膜にとどまっていますが、大きくなると食道壁の筋肉に入り込み、さらに大きくなると食道壁を貫いて、食道に接している肺、気管・気管支、大動脈、心臓、背骨にまで広がっていきます。また、がんが食道壁内の血管に入り込むと、癌細胞が血液の流れに乗って、食道とは離れた別の臓器にたどり着き、そこで塊をつくって増えはじめます。これを「他臓器転移」といいます。肝臓、肺、骨、などが他臓器転移しやすいところです。また、がんが食道壁内のリンパ管に入り込むと、リンパ液の流れに乗って「リンパ節転移」をおこします。食道周囲、胃の周囲、首の付け根のリンパ節などが転移しやすいリンパ節です(図2)。食道がんは他のがんに比べて早期にリンパ節転移を来しやすい傾向があります。

図2:食道がんの転移しやすいリンパ節

食道がんの症状

 初期には、“食道がしみる”感じを訴える患者さんもいますが、全く無症状の場合がほとんどです。がんが大きくなってくると、食事が、“つかえる感じ”の症状がでてきます。さらに大きくなると、癌が食道を塞いでしまうために、“食物、水が通らなくなり”、唾液も飲み込めずに吐きだすようになります。食べ物が通りにくくなると、食事量が減ってしまい、体重が減少します。また、がんが進行し、食道の外に広がって肺や心臓、背骨を圧迫すると、“胸の奥や背中の痛み”を感じるようになります。がんが、気管や肺に広がると“咳・たん”の症状がでることがあります。また、がんが食道のすぐとなりの声帯の動きを担う神経(反回神経)を巻き込んでしまうと、“かすれ声”などの症状がでることがあります。

診断・検査法

 食道癌に対して適切な治療法を選択するためには、食道癌の大きさ・深さ・場所や、リンパ節転移、他臓器転移を正確に診断する必要があります。そのために、下記の検査を行います。ただし、現在の画像診断には限界があり、がんの隣接臓器への浸潤や、他臓器への転移が描出されないこともあります。

上部消化管内視鏡 (食道胃カメラ)

 食道癌の大きさ・深さ・形の診断をします。特殊な波長の光でがん組織を的確にとらえたり、ヨード液を散布することで癌部、非がん部を正確に判定することができます。組織検査(顕微鏡によるがん細胞の確認) のために組織を採取することも行います。

上部消化管造影 (バリウム検査)

 バリウムを飲んでいただき、食道、胃を流れるバリウムをレントゲン撮影する検査です。食道がんの大きさ・深さ・形・場所の診断をします。また、がんによる食物の通りにくさについても評価を行います。

CT (頚部~骨盤)

 X線を使って身体の断面を撮影する検査です。食道がんの大きさ・食道外への広がり、リンパ節転移、他臓器転移の診断をします。

PET検査

 身体の各組織のブドウ糖代謝を画像にする検査です。がん組織は他の組織よりもブドウ糖を多く必要としていて、活発に代謝しています。特別に標識したブドウ糖を注射した後に、CTを撮影することによって、がんの位置やリンパ節転移、他臓器転移の診断をします。

病期(ステージ)

 病期とはがんの進行の程度を示す言葉で、0〜Ⅳに分類され、数字が大きいほどがんが進行していることを意味します。病期は、がんがどの程度深くまで及んでいたか(T因子)(図3、表1)、リンパ節転移の程度(N因子)、遠隔転移の有無(M因子)で決まります(表1、2)。前述の検査を行って、病期を決定し、病期分類にもとづいて治療法を決定します。

図3:腫瘍の深さの分類(T因子)

表1:食道がんのT・N・M各因子の分類(日本食道学会による分類)
T因子
(がんの深さ)
T1a がんが粘膜内にとどまる
T1b がんが粘膜下層にとどまる
T2 がんが固有筋層にとどまる
T3r がんが食道外膜に広がっている
T3br がんが食道周囲の臓器に広がっている可能性がある
T4 がんが明らかに食道周囲の臓器に広がっている
N因子
(リンパ節転移)
N0 領域リンパ節※に、リンパ節転移がない
N1 領域リンパ節※に、1~2個のリンパ節転移がある
N2 領域リンパ節※に、3~6個のリンパ節転移がある
N3 領域リンパ節※に、7個以上のリンパ節転移がある
M因子
(遠隔転移)
M0 遠隔転移がない
M1a 郭清により治癒の期待できる領域外リンパ節転移がある
M1b M1a以外の領域外リンパ節転移や遠隔転移がある

※領域リンパ節:がんと直結したリンパの流れをもつ近傍のリンパ節
日本食道学会編「臨床・病理 食道癌取り扱い規約(第12版)」(金原出版)より一部改変

表2:食道がんの病期(ステージ)分類(日本食道学会による分類)
N0 N1 N2-3
M1a
M1b
T0, T1a 0 ⅢA Ⅳb
T1b ⅢA Ⅳb
T2 ⅢA Ⅳb
T3r ⅢA Ⅳb
T3br ⅢB ⅢB ⅢB Ⅳb
T4 Ⅳa ⅢB ⅢB Ⅳb

日本食道学会編「臨床・病理 食道癌取り扱い規約(第12版)」(金原出版)より一部改変

治療法

1 食道癌の治療方法

 各種検査の結果から癌の進行度(ステージ0~4 )や全身状態を総合的に判断して、個々の患者さんに最適な治療法を決定します。実際には以下の治療法を、組み合わせて行います。
 ①内視鏡的粘膜下層剥離術
 ②食道切除手術
 ③化学放射線療法
 ④放射線単独療法
 ⑤化学療法(抗がん剤)

2 各ステージごとの治療方針の概略

1) ステージ0, Ⅰの治療方針
腫瘍の深さが浅く(粘膜固有層まで)、病変の広がりが大きくなければ、内視鏡治療(内視鏡的粘膜下層剥離術)の適応となります。内視鏡治療の適応とならない場合は、食道切除手術、化学放射線療法の治療の選択肢がありますが、治療効果は同等と考えられており、全身状態や患者様のご希望に応じて選択していただいております。

2) ステージⅡ, Ⅲの治療方針
ステージⅡ, Ⅲの進行食道癌に対しては、手術のみでは予後不良であるため、化学療法も組み合わせて行います。術前化学療法(手術前に行う化学療法)と術後化学療法(手術後に行う化学療法)を比較した臨床試験では、術前化学療法の方が、予後が良好であったため、術前化学療法を行なった後に切除手術を行うことが標準治療として確立されております。
また、術前化学療法+手術には及びませんが、化学放射線療法でも根治が得られる可能性もあり、手術が難しい場合や、希望されない場合の治療の選択肢となります。

3) ステージⅣの治療方針
遠隔転移を伴わない場合(ステージⅣa)は、化学放射線療法で根治が得られる可能性があります。遠隔転移を伴う場合(ステージⅣb)では、根治を目指した治療は困難なことが多く、全身化学療法の適応となります。食道がんで食事の通りが悪くなってしまった場合は緩和照射(食道の開通を目的とした放射線治療で根治を目指した治療ではありません)や、食道ステント留置(金属の網でできた筒状のものを狭くなった部分に留置して食道を広げ、食事が通過できるようにする治療)などを行うこともあります。

3 それぞれの治療法の解説

 以下に当院で行なっている、食道切除手術、化学放射線療法、放射線単独療法、化学療法、食道ステント留置について解説します。

1) 食道切除手術
 食道切除手術は、食道癌を完全に取り除き、食物の通り道を確実に確保することを目標にしています。

①術前化学療法
 前述のようにステージⅡ, Ⅲの進行がんの場合は、手術の効果を高めるため、術前化学療法を行なった後に食道切除手術を行っております。術前化学療法は、最近までシスプラチン+5-FU療法を2コース行うことが標準でしたが、ごく最近の臨床試験で、トセタキセル、シスプラチン、5-FUの3剤を用いたDCF療法を3コース行った方が、予後が良好であることが示されたため、現在はDCF療法を3コース行うことが標準治療となっております。しかし、DCF療法は、シスプラチン+5-FU療法と比べて、治療効果が高いのですが、副作用が多く体への負担が大きくなります。ご高齢であったり、持病をお持ちの方は、シスプラチン+5-FU療法を行うこともあります。
 どちらの化学療法も、3週間毎に繰り返し、5-FUという抗がん剤を24時間持続で点滴を行うため入院していただき治療を行います。シスプラチン+5-FUでは1週間前後の入院、DCF療法では副作用の管理のため10日前後の入院となることが多いです。化学療法の副作用には個人差があり、副作用が強い場合は入院期間が延長したり、治療スケジュールが変更になることがあります。また、1コース終了毎に、外来でCT等の検査を行い、治療の効果を確認しています。実際の手術までの治療スケジュールを図4にお示しします。

図4:術前化学療法から手術までの治療スケジュール

②手術の方法
 手術は、がんを含めて食道のほとんど(食道亜全摘)と、胃の上部を切除します。さらに、転移している可能性のあるリンパ節を切除する (リンパ節郭清)ことで、がんを治すことを目的とした治療です。最初に、胸部の手術操作で、食道をリンパ節とともに切除します。次に、腹部の手術操作で、胃の上部と胃の周囲のリンパ節を切除するとともに、胃を管状に細長く形成して(胃管と呼びます)、切除した食道のかわりにします。最後に、頸部の手術操作で、胃管を持ち上げて、残った食道とともに頸部から引き出して、つなぎ合わせることで食物の通り道を再建します(図5)。

図5:手術のイメージ

 胃が使用できない場合は、大腸や小腸を使って再建を行うこともあります。手術は胸部、腹部、頸部の3領域の手術操作が必要となり、8~12時間ほどかかる大手術となります。当院では手術が身体に与える負担を軽減するために、胸腔鏡や腹腔鏡を用いた傷の小さい手術を標準術式とし、可能な患者さんには積極的に行っています(図6)。

図6:食道がん手術の創部

 また、術後は後述するようにたべられる食事の量が減少することに加え、術後合併症が起きると一時的に絶食が必要となることもあるため、栄養状態が悪くなるリスクがあります。そのため、口から食べられない食事を補う目的で、手術の際に、腸に直接チューブを入れる腸瘻(ちょうろう)造設を行なって、術後早期から栄養投与を行なっています(図7)。

図7:腸瘻造設術

③術後経過
 手術後は、後述する合併症がなく順調に経過すれば、通常7日目から食事を開始します。後述するような食事の食べ方に慣れていただき、問題がなければ手術後2週間程度で退院になります。手術後早期には十分な量の食事を摂取することは難しいため、腸瘻は退院時には抜かずに、ご自宅でも継続していただいております。外来で、十分な量の食事が摂取できるようになってから抜去します。

④合併症
 合併症としては、術後出血、肺炎、縫合不全(食道と胃のつなぎめのほころび)、反回神経麻痺(かすれ声)、不整脈、心不全、乳糜胸(リンパ液の漏れ)などがあります。術後合併症が発生した場合は、合併症に対する治療が必要となり、長期絶食が必要となったり、入院が長くなることがあります。まれに 術後合併症から全身状態が悪化し、死に至る場合があります(全国統計で1%程度)。
 手術前から糖尿病や肝臓、心臓、肺などの他の臓器に障害・病気をもっている人では、術後合併症の発生率が高くなります。また、喫煙をしていると手術後の喀痰が増加し、手術後に肺炎を合併するリスクが高くなるため、術前の禁煙をお願いしております。

⑤手術後の生活について
 手術後は、手術により食物の通り道を作り変えるので、その新しい構造に慣れる必要があります。食道の代わりに持ち上げた胃管は、胃としての食べ物を貯めておいたり、消化して十二指腸へと送り出す働きが失われるため、食事の食べられる量が少なくなり、ほとんどの方で体重が減少します。そのため、手術後は、「よくかんでゆっくり食べる」、「食事の回数を増やす(間食)」といった食事の摂り方を身につけていただき、これからずっと実践していただく必要があります。また、胃の入り口には、胃の内容物を食道へ逆流しないようにする働きがあります。この部分も手術で切除してしまうため、胃(胃管)内容の逆流が起こりやすくなり、逆流性食道炎を起こすこともあります。個人差はありますが、胃酸を抑える薬の内服や、「食後にすぐに横にならない」「頭を高くして寝る」などの生活上の工夫が必要となります。
 手術後の生活については前述のような食事や生活習慣の注意が必要となりますが、それ以外は特に制限はありません。手術後の体力の回復には個人差もありますが、術後に仕事に復帰された方や、趣味の山登りやゴルフなどを楽しまれている方も多数いらっしゃいます。

⑥術後補助化学療法
 術後補助化学療法は、手術後に再発のリスクを減らす目的で、手術後に一定の期間、化学療法を行う治療です。最近まで、再発リスクの高い進行癌では、前述のように術前化学療法を行うため、術後補助化学療法は行わないことが一般的でありました。しかし、ごく最近、日本を含む29カ国が参加した臨床試験で、進行食道癌に対して術前化学放射線療法を行なった後に食道切除手術を行なって、術後病理(切除した食道を顕微鏡で分析する検査)で癌が残っていた症例に対して、術後補助化学療法としてニボルマブ療法を1年間行うことで、再発リスクを下げられることが明らかになりました。
 この臨床試験では術前化学放射線療法(海外の標準治療)を行なって手術を受けた患者様が対象となっているため、厳密には術前化学療法(本邦の標準治療)を行なって手術を受けた患者様に対して、術後のニボルマブ療法が有効であるかは証明されていません。しかし、再発リスクを減らす効果が期待できる可能性があり、ご希望の患者様には術後補助化学療法としてニボルマブ療法を行っております。

2) 化学放射線療法 (化学療法+放射線療法)
 化学放射線療法は、放射線治療と、治療効果を高めるための化学療法を組み合わせた治療法です。根治が期待できる治療法ですが、化学放射線療法の効果には個人差が大きく、事前に治療効果を予測する確実な方法はありません。食道切除手術とは異なり、治療による入院期間は長くなりますが、本来の食道・胃を温存することができるという長所があります。
 治療スケジュールに関してですが、2ヶ月程度の入院で行ないます。放射線照射は1日1回、1回あたり15分程度で終了し、これを週に5日(月〜金の平日)おこない、約6週間つづけます。この放射線治療期間中に第1週目と第5週目に、化学療法(シスプラチン+5-FU療法)を並行して行います(図8)。

図8:化学放射線療法の治療スケジュール

 治療期間中の副作用としては、放射線が当たった食道に食道炎を来たすことがあり、嚥下時の違和感や痛みがでることがあります。また、放射線が当たった部位の皮膚に日焼けに似た症状が出ることがあります。化学療法と放射線療法の両方の影響で、血球減少(白血球や血小板などの血液の成分が減少します)や、倦怠感、吐き気、食思不振などが起こることがあります。治療中に起こる副作用の多くは、終了後次第に改善されます。また、稀ですが、食道癌が消失することにより食道に穴があいてしまう食道穿孔や穿通などの重篤な合併症を引き起こす可能性があります。
 治療が終了してから数ヶ月後~数年後におこりうる副作用(晩期障害)があります。具体的には、肺炎(放射線による引き起こされる肺炎として“放射性肺臓炎”とよばれます)や胸水貯留(肺の周りに水が溜まる)、心囊液貯留(心臓の周りに水が溜まり心臓の機能が低下する)、甲状腺機能低下が起きることがあります。また、食道癌が存在した部位が細くなる(食道狭窄といいます)ことがあります。晩期障害は全ての患者さんに見られるわけではありませんが、治療が必要になることもあります。
 食道や胃が温存されるため、手術のような治療後の生活上の注意などはありません。しかし、治療後の食道に再発することも少なくないため、定期的な内視鏡検査を行うことが大切です。
 多くのがん治療では、正常組織が許容できる限度近くまで照射を行うため、同じ部位に、再度同様に放射線治療を行うことは原則できません。そのような場合に、根治をめざす次の手段として、食道切除手術を行うことがあります。この手術のことをサルベージ手術と呼びますが、放射線照射の影響が食道や周囲組織に及ぶため、通常の手術と比べ手術手技は難しくなり、合併症が多くなります。

3) 放射線単独療法
 放射線単独療法は化学療法を併用せず、放射線治療のみで行う治療です。放射線単独療法は、化学療法を併用しないため化学放射線療法と比べて副作用は少ないですが、食道がんを根治できる可能性は低く、一時的な縮小が得られても再発する可能性が高い治療です。
 放射線単独療法は、(1) 手術や化学放射線療法ができないほど体力が低下した場合や、(2) すでに癌が離れた臓器に転移しており根治的な治療はできないが、「食道癌のため食道の通りが悪い」という症状を緩和させるために行う場合があります。

4) 化学療法(抗がん剤治療)
 化学療法は、抗がん剤の点滴注射や内服を行う治療法です。化学療法は、放射線療法と併用で行われる場合(化学放射線療法)や、手術と組み合わせて手術の前後に期間を決めて行う場合(術前、あるいは術後補助化学療法)もありますが、ここではそれ以外の化学療法単独で行う場合の治療について解説します。
 化学療法は、食道がんを完全に治すことは難しいですが、一時的に縮小させたり、進行を遅らせたりする効果が期待できます。体力がなく手術や化学放射線療法ができない方や、血流に乗って癌細胞が食道と離れた場所(肝臓、肺など)に転移した方に行われます。
 化学療法の効果については個人差があり、一部の症例では抗がん剤がまったく効かない、という場合もあります。治療前に、抗がん剤の治療効果を正確に予測する確実な方法はありません。
 食道がんに対しては、シスプラチンと5-FUの併用療法(シスプラチン+5-FU療法)が最もよく行われてきました。最近、シスプラチン+5-FU療法に抗PD-1抗体薬であるペムブロリズマブやニボルマブを加えた3剤併用療法や、ニボルマブとイピリムマブの併用療法が、シスプラチン+5-FU療法よりも高い効果を示すことが明らかにされ、当科でも可能な患者様には積極的に行なっております。また、その他の食道がんに対する抗がん剤としては、パクリタキセルやドセタキセルなどがあります。
 化学療法は、一時的に縮小や進行を遅らせる効果が得られても、治療を繰り返してゆくと治療が効かなくなってきます。一つの治療が効かなくなっても、別の治療では効果が得られることもあり、治療薬を変更しながら可能な限り治療を継続してゆきます。長く治療を行なうと副作用が蓄積し、継続が難しくなることもありますが、可能な限り治療を継続してゆきます。

5) 食道ステント留置
 食道ステント留置は、食道がんによって食道が狭くなり、食べ物の通りが悪くなってしまった場合に行います。がんを治す治療ではないため、通常はがんを治す治療ができない場合に食事のつかえの症状を和らげる目的で行います。
 胃カメラを使って、がんによって狭くなってしまった部分に、金属の網を筒状にしたもの(ステント)を挿入し、広げてあげることで口から食事をとれるようにする治療です。
 合併症としては、疼痛や違和感、穿孔(食道に孔があく)、出血などがありますが頻度はそれほど高くありません。また、留置したステントはもとの食道のようには広がらないため、ステント留置後は柔らかい食事をゆっくりとよく噛んで食べる必要があります。

当科での手術実績
当科における食道がんの手術件数と鏡視下手術の件数

食道切除再建手術の件数 食道切除再建術における鏡視下手術の件数
胸腔鏡手術 腹腔鏡手術
2017年 7 6 4
2018年 4 4 0
2019年 2 2 0
2020年 1 1 0
2021年 5 4 0
2022年 7 7 2