神経内科

診療案内

 三次救命救急センターを併設する病院にある神経内科として、すべての神経・筋疾患を対象に診療を行っています。夜間・休日もある程度の初期検査が可能であり、可能な限りの迅速な対応が行えることを目指しています。
 しかし、近年、近隣の神経内科縮小の影響のため、診察依頼が急増して待ち時間はかなり長くなっております。当科受診の際には、緊急を除き、かかりつけ医のある患者さんは紹介状を書いて頂くとともに、かかりつけ医療機関から当院地域連携室を通してご予約をお取り頂くようにお願いします。緊急の場合は、かかりつけ医の先生からご連絡頂いて直接お電話等で情報交換し受診を決めさせて頂きます。また、慢性期の患者さんや症状が落ち着いている患者さんの継続治療は原則かかりつけ医での通院治療をお願いしております。

対象疾患

 大脳から筋肉に至るいわゆる神経系の器質的・機能的異常に基づく諸症状に対応しています。当院では脳卒中に関しては主に脳神経外科が対応しています。
 心因性・精神的な異常に基づく諸症状については精神科への受診をお願いします。

治療実績

<外来> パーキンソン病、脊髄小脳変性症、多系統萎縮症、重症筋無力症、多発性硬化症、筋萎縮性側索硬化症などのいわゆる神経・筋難病が約60%、その他は認知症、てんかん、脊髄疾患、末梢神経障害、脳血管障害、片頭痛などです。
<入院> 前記諸疾患の急性期や合併症併発、髄膜炎や脳炎などの感染症、プリオン病、原因不明の意識障害、全身疾患に伴う神経症状などです。ただし、脳出血・くも膜下出血とともに、血栓溶解療法など脳梗塞急性期治療は当院においては脳神経外科が主に担っております。

実施可能な検査

 画像診断としてはMRI、CT、核医学検査(SPECT)、生理検査としては脳波検査、筋電図検査、誘発電位検査、その他各種知能検査、神経心理検査が可能です。
アミロイドPET検査は設備がないため当院で実施することはできません。

入院診療

 急性期病院の一診療科であり、療養目的の入院は受付けておりません。急性期を過ぎた場合は在宅療養、施設入所などに移行することになります。ただし、在宅療養中の神経難病等の患者さんの家族都合等による短期入院について御相談に応じられることがあります(回数・日数など種々の条件があるので、まずはかかりつけの主治医を通じて地域連携室に御相談下さい)。
 また、神経難病における在宅療養については、近隣の医師会や訪問看護ステーション、介護支援センターなどとの協力・連絡のもと、支援体制の構築にご協力しております。

言語療法室について

 ながらく神経内科の直轄で言語療法室が置かれてきました。しかし、近年神経難病患者さんによる言語療法よりも、脳卒中で脳神経外科入院中の患者さんによる言語療法の患者さんが増えており、必ずしも神経内科の管理下にあるべきということではなくなってきました。そのため、組織編制の変更により言語療法室はリハビリテーション科に移行することとなりましたのでお知らせ致します。なお、基本的に入院患者さんの嚥下機能や高次機能の評価・リハビリを行ってきましたので、診療そのものについては従来通りです。

*アルツハイマー病の抗アミロイドβ(ベータ)抗体治療薬について

 当院は神経内科が担当しての初期導入施設となっております。
 マスコミでも大々的に報じられたため、アルツハイマー病の治療薬としてレカネマブ(レケンビ®)の薬剤名をご存じの方も多くいらっしゃるかと思います。アルツハイマー病の原因物質のひとつである脳内のアミロイドβを取り除こう、あるいは減らそうとする治療薬です。
 残念ながら、認知症すべての治療薬ではなく、また、治療によりアルツハイマー病による認知症が治癒する・改善するという効果は認められておりません。点滴治療を受けることにより点滴を受けていない方に比べると進行がゆっくりになるという治験データをもとに、進行を一定程度遅らせることを期待する治療です。
 これまでのアルツハイマー型認知症における内服治療といくつか大きく違う点があります。レカネマブについて申せば、一つ目は認知症の症状や頭部画像診断だけでは適応とならず、アミロイドPET検査もしくは腰椎穿刺(腰に針を刺して脳脊髄液を採取する検査)で脳内にアミロイドβが蓄積していることを示す検査結果が必須となることです。二つ目は、MMSE検査という認知症スクリーニング検査で22点以上であることも必須で、これは中等度以上の認知症の状態に至ったアルツハイマー病の患者さんには本薬剤投与の効果がなく副作用のみとなることで敷かれた制限となります。そのため、できるだけ早期の状態で適応を考えていくべき薬剤です。一方、治療適応を考える際して、本薬剤による脳浮腫・脳出血の副作用も考慮が必要です。また、本人の日常生活状況を観察していて、こちらからの質問にお答え頂けるご家族などの存在も必要です。その他にもいくつかクリアしなければならない事項があり、残念ながら投与希望で受診された患者さん全員が適応ということにはならず、実際、治療希望で来院された患者さんのごく一部にしか適応になっていません。
 検査の結果で、軽症または軽度認知障害のレベルのアルツハイマー病の診断となり、副作用のこともご理解いただいた上で、治療開始となった場合は、18か月間にわたって2週間に1度点滴静注を行います(レケンビの場合)。この治療を受けた場合、投与を受けない人と比べて認知機能低下が緩やかになるとされています(認知機能の改善は認められていません)。治療開始後、半年間は本治療薬による副作用が出やすい時期であるため、導入施設である当科での通院治療となります。現在、検査入院、初回導入のための2回の入院を経て、以後、外来通院での2週間ごとの点滴治療となります。半年間の治療後は継続治療施設での点滴治療に移行しております。当院でこの治療を開始して日が浅いため、診療体制は流動的な面がありますが、治療開始半以降の継続治療施設としてはお住いの地域の医療圏における県指定の認知症疾患医療センターがメインになるのではと想定しております。紹介元医療機関での継続点滴が可能であるならば移行の問題はあまり生じないと思われます。しかし、不可能な施設の場合はいったん茨城県指定の認知症疾患センターにご紹介いただいて受診し、その上で当科へと橋渡しして頂いておけば、治療開始半年後の移行が円滑にできるのではないかと考えます。
 また、抗アミロイドβ抗体薬の第2弾としてドナネマブ(ケサンラ®)が上市され新たな選択肢に加わろうとしております。しかし、こちらは必要となる検査がレカネマブと若干異なる見込みで、情報を収集しているところです。そのため当院での実施の目途はまだたっておりません。